午後2時、六人用の会議室では営業担当が一人でWeb商談中。もう一つの会議室もオンライン研修で埋まり、社内で四人集まって相談したいチームは場所を探している。執務席では別のWeb会議が始まり、隣の社員がヘッドセットを着けた??。出社とテレワークが混在するオフィスでは、こうした使い方の重なりが起こります。
国土交通省が2026年3月に公表した令和7年度調査では、雇用型就業者のうち直近1年間にテレワークを実施した人の割合は16.8%でした。コロナ禍後の減少から増加に転じ、安定基調で推移しているとされています。出社か在宅かの二択ではなく、社内と社外の人が同じ会議に参加する場面も含めて、オフィスを整える視点が必要です。
この記事では、30人在籍し、出社の多い日は24人、Web会議は最大6組が同時利用する会社を仮想例として考えます。席を減らすことや個室を増やすことを先に決めず、仕事の内容と時間帯から、使いやすい配置を組み立てていきましょう。
- ・出社人数とWeb会議の同時利用数に合わせた席の考え方
- ・簡易スペース・半個室・個室ブースの使い分け
- ・音・背景・照明・電源・通信・換気を含めた環境づくり
必要な席は、出社人数と会議の重なりから考える
1-1.平均出社人数だけでは、混む日の状態がわからない
普段は18人が出社している会社でも、部署の定例会や研修がある日は24人集まるかもしれません。平均に合わせて18席だけ用意すると、そうした日に席が不足します。
最初は、曜日別・時間帯別の出社人数を数週間記録してみてください。全社で集まる日や採用予定も加えれば、通常日の人数と、対応しておきたい多い日の人数を分けて把握できます。
固定席が必要な人もいます。書類を扱う仕事、専用機器を使う仕事、個別の調整が必要な席などは、出社率だけで共用化を決めない方がよいでしょう。席の数を決める前に、誰がどんな環境を必要とするかを整理します。
1-2.Web会議は「件数」より「同時に何組使うか」
一日にWeb会議が20件あっても、時間が分散していれば、20か所の会議席は必要ありません。逆に、一日の件数が少なくても、午後2時に6組重なれば、その時間の受け皿が必要になります。
予約記録などから、開始・終了時刻、オフィス側の参加人数、発言の多さ、機密性を確認します。会議名や機密内容を集める必要はなく、場所選びに使う分類で十分です。
集めたい情報は、次のようなものです。
- 曜日・時間帯ごとの出社人数と、出社が集中する予定
- Web会議が同時に開かれる組数
- 各会議にオフィスから参加する人数
- 聞く時間が中心か、会話や説明が中心か
- 内容を周囲に聞かせられるか、個室が必要か
「オンライン会議が多い」という感覚を、どんな場所が何か所必要かという計画に変えるための記録です。
1-3.執務席と会議席を、単純に足したり引いたりしない
仮想例では、24人が出社する時間帯に、6組のWeb会議が重なります。このうち1組が二人で参加するなら、会議に入る社員は7人です。
ここで「執務席24席に会議席7席を足して、31席が必須」とは限りません。共有席を使い、会議への移動中に執務席を空ける運用も考えられます。一方、固定席や荷物を置いた席は、本人が移動しても他の人が使えるとは限りません。
同じ社員を二重に数えないことと、実際に使える席を確保することは、両方必要です。会議ブースを日常の執務席にも数えるなら、会議予約で使えなくなる時間まで含めて検討します。総席数より、時間帯ごとにどの仕事がどこでできるかが判断の軸になります。
一人のWeb会議で、通常の会議室を埋めない工夫
2-1.少人数の会議を、大きな部屋から受け止め直す
会議室がいつも満室でも、増設が最初の答えとは限りません。六人用の部屋を一人で使う予約が多ければ、個人用のWeb会議席へ移せるかを検討します。
ただし、一人利用を一律に禁止するのは乱暴です。採用面接、人事の相談、契約交渉など、人数が少なくても個室が必要な会議があります。部屋を使う理由まで見れば、大きな会議室を残すべき用途と、別の場所へ移せる用途を分けられます。
最初の仮想例なら、営業商談は個室ブースへ、発言の少ない研修は内容に応じて簡易席へ移す案が候補です。四人の社内打ち合わせは通常の会議室を使う。空間を広げる前に、このような役割分担で混雑が変わるか確かめます。
2-2.予約の取り方も、場所の増設と一緒に見直す
設備を増やしても、念のため押さえた予約が残れば満室表示は変わりません。実際には空いている部屋を見つけたのに、使ってよいかわからない。そんな状態を減らすため、未使用予約の解除や早く終わった場合の解放をルールにします。
予約画面には、定員だけでなく「一人の商談向け」「二人で同じ画面を見る席」「機密性の低い短時間利用向け」といった用途も示すと選びやすくなります。
連続する会議には、退出と接続確認に使う時間も見込みましょう。予約を細かく詰めれば効率が上がるとは限りません。前の利用者がまだ通話中で、次の人が廊下で接続を始めるようでは、落ち着いて使える場所になりません。
簡易スペース・半個室・個室ブースを使い分ける
3-1.簡易スペースは、短時間や聞く利用の受け皿に
空いている壁際にデスクを設け、電源とヘッドセットを用意する。こうした簡易スペースは、利用を試しながら整えやすい方法です。社内研修や機密性の低い説明会など、聞く時間が中心の利用が候補になります。
ただし、ヘッドセットは相手の音声を周囲へ流しにくくする機器で、自分の話し声が外へ出ることを止める設備ではありません。「聞く予定だったが、途中で質問や議論が始まった」という使い方も想定します。
執務席のすぐ横や複合機の前より、静かな作業席から距離を取り、人が頻繁に横切らない場所を探してください。簡易という名称でも、机と電源を置くだけで運用を始めず、音と背景を一度確認したいところです。
3-2.半個室は、視線を遮りながら使う場所
背面や側面をパネルで囲う半個室は、人の動きが気になりにくく、Web会議の背景も整えやすい空間です。吸音材を備える製品なら、反響や音の広がりを和らげる用途にも使えます。
一方、入口や上部が開いていれば、音はそこから出入りします。半個室を並べても、隣の声が聞こえることはあります。入口を向かい合わせにする配置、話す人同士が近い配置では、とくに実際の聞こえ方を試す必要があります。
個室ほど囲われない場所が適するのは、短い社内連絡や、内容を聞かれても問題のない会議などです。見た目に囲まれていることと、会話を周囲から守れることは、同じではありません。
3-3.個室ブースは、発言と機密性を踏まえて選ぶ
営業商談や面談など、まとまった時間話す利用には、扉と屋根で囲う個室ブースが候補です。製品によって遮音・吸音の構成、換気、机の広さ、照明などが異なるため、外観だけでは比較できません。
見学できるなら、普段使うパソコンで会議に入り、内外の声の聞こえ方を確かめます。高い遮音性能があっても「どんな状況でも内容が漏れない」とは言い切れません。機密用途は、設置先と利用条件に合わせた評価が必要です。メーカーも、実際の聞こえ方は空間や素材などの条件で変わると説明しています。
| スペース | 利用の候補 | 強み | 導入時に確かめること |
|---|---|---|---|
| 簡易スペース | 聞く利用、短時間の非機密会議 | 既存空間で試しやすい | 自分の声、通行、背景 |
| 半個室 | 短い連絡、視線を避けたい利用 | 囲まれ感と開放感を両立しやすい | 開口部からの音、隣席との距離 |
| 個室ブース | 商談、発言の多い会議、面談 | 音の出入りを抑える設計を選べる | 実際の遮音、換気、広さ、設置条件 |
| 通常の会議室 | 複数人の議論、共同作業 | 人数・資料・機器に対応しやすい | 個人利用との競合、遠隔参加者の見聞き |
座席配置は、静かな作業と会話の場所を分ける
4-1.音を出す席を、集中する席の隣に集めない
図面上で空いているからといって、集中作業席の背後にWeb会議席を並べると、周囲の社員が負担を引き受けることになります。会議用の場所を確保しただけでは、オフィス全体の音問題は解決しません。
人が話すエリアと静かに作業するエリアを分け、移動するための通路を間に取るなど、配置から距離をつくります。ただし、通路を挟めば十分とは限らず、声の方向や壁・天井の反射も関わります。
実際の声量で話し、集中席側で聞いてみると、図面だけでは気づけない問題が出てきます。話す利用が多い場所ほど、吸音や遮音の設備と配置を合わせて考えるのが基本です。
4-2.同じ会議に参加する人は、まとめる案も検討する
仮想例の6組のうち、二人が同じ取引先との会議に参加するなら、一人用ブースを2台使うより、二人用の場所で参加した方が適する場合があります。ただし、別々の会議を行う二人を同じ空間へ入れる話ではありません。
同室で同じ会議へ参加するときは、複数のパソコンのマイクとスピーカーを同時に使うと、エコーなどの原因になります。会議室用機器に音声を集約し、資料表示用のパソコンは音声接続を切るなど、設定をそろえます。
場所をまとめれば必ず機器も減らせる、というわけではありません。座る人数に対応する集音範囲、画面の見やすさ、カメラに映る範囲まで確認して、まとめるメリットがあるかを判断します。
4-3.会議へ移動した後の席と荷物を、運用で決める
共有席を導入するなら、Web会議へ移る間、その執務席を他の人が使ってよいのかを決めておきます。ノートパソコンだけ持ち出し、書類やバッグを置いたままなら、実質的には席を占有しています。
短い会議のたびにすべて片付ける運用は、利用者の負担になる場合もあります。短時間は席を保持する、一定時間以上離れる場合は解放するなど、自社の利用状況に合わせて試しましょう。
ブースの前にバッグを置くと、出入りや通行を妨げることもあります。荷物の置き場所、個人収納、席の使い方までそろって初めて、執務と会議の間を無理なく移動できます。
音・背景・照明は、相手側から確認する
5-1.吸音と遮音、マイク設定の役割を分ける
室内で声が響くなら、反射を減らす吸音を検討します。外へ声が漏れるなら、壁・扉・隙間などを含めた遮音の検討が必要です。会議アプリのノイズ抑制は、相手へ送る音声を改善するための機能で、自分の声を室外へ出さなくするものではありません。
ノイズ抑制を強くすれば、どの会議でも快適になるとも限りません。複数人で参加する場合は、離れた席の人の声が拾われるかを確かめ、個人用と会議室用で適切な設定を選びます。
テストでは、隣の席でも会議を行い、遠隔側に聞いてもらうと実用性を判断しやすくなります。「こちらでは静かだった」で終えず、相手が声を聞き取り、資料の説明を追えるかまで確認します。
5-2.背景ぼかしに頼らず、映らない配置をつくる
背後のホワイトボード、社員の画面、出入りする来客。Web会議で映したくないものは、想像以上に身近です。背景ぼかしや仮想背景を使っても、機密情報が見られることを防げない場合があると、Microsoftも案内しています。
カメラを実際に置き、座った状態だけでなく、少し横へ動いた場合やドアが開いた場合も確認します。背景は壁や固定パネルなど、情報と人の動きが少ない方向へ向けると管理しやすくなります。
照明では、背後の窓による逆光、顔に落ちる影、画面や眼鏡への映り込みを見ます。午前は問題なくても午後の日差しで見え方が変わるため、利用の多い時間帯に確認するのが有効です。明るい照明を追加する前に、席やカメラの向き、ブラインドの調整を試してください。
電源・通信・換気まで、使える場所に仕上げる
6-1.着席してすぐ、必要な機器につながるか
パソコンを充電し、モニターを接続し、ヘッドセットを使う。毎回床に手を伸ばして電源を探す席は、短時間の利用でも手間がかかります。
コンセントの数だけでなく、届く位置、ACアダプターの大きさ、ケーブルの取り回しを確認します。USB-Cの端子があっても、必要な給電能力や映像出力に対応しているとは限りません。会社で使うパソコンと機器の組み合わせで試すことが欠かせません。
足元のコードが退出時に引っ掛からないかも見ておきましょう。机、椅子、電源、ケーブルを別々に選ばず、一人が座って使い終わるまでの動作として確かめます。
6-2.通信は、ブース内と混雑時間帯で試す
執務席でWi-Fiが使えていても、新しいブース内で同じ品質になるとは限りません。壁や扉、アクセスポイントとの位置関係などが通信に影響する可能性があります。
利用予定の場所で扉を閉め、映像と画面共有を使って接続を試します。さらに、会議が重なる時間帯にも確認してください。一台で問題がなくても、複数の会議やほかの業務通信が同時に動くと条件が変わります。
Microsoftのネットワーク計画資料も、帯域不足だけでなく、遅延のばらつきやデータの欠落などが通話品質に影響するとしています。「回線速度が何Mbpsあるから大丈夫」と判断せず、不安定な場合は情報システム担当者へ相談し、有線接続や無線設備の見直しを検討します。
6-3.換気ファンがあっても、暑さ対策まで済むとは限らない
小さな個室では、人とパソコンから出る熱が使い心地に影響します。換気ファンが設けられた製品でも、換気と冷房は別の機能です。ファンが動いていることだけで、長時間の会議に適した温度になるとは言えません。
製品がどこから空気を取り入れ、どこへ排出するのかを確認します。ブースがオフィス内の空気を取り入れる方式なら、設置するフロア自体の空調・換気条件も関わります。吸排気口を壁や家具でふさがない配置が必要です。
試す際は、短時間だけ入って終わらず、想定する人数と会議時間で使用感を見たいところ。暑さ、空気のこもり感、ファンの音を確かめ、必要に応じてメーカーと建物の設備担当者へ相談します。
6組が重なるオフィスを、用途別に組み直す
7-1.すべてを個室にせず、必要な機能を割り当てる
仮想例の午後2時には、次の6組が同時に会議へ参加するとします。通常の会議室をすべて一人利用へ割り当てる前に、各会議の内容から場所を分けてみます。
| 同時利用の内訳 | オフィス側の人数 | 検討する場所 |
|---|---|---|
| 非機密の研修・説明会が2組 | 各1人、計2人 | 聞く利用向けの簡易席を2席 |
| 発言の多い商談が2組 | 各1人、計2人 | 個室ブースを2か所 |
| 機密性の高い面談が1組 | 1人 | 性能を確認した個室や会議室 |
| 同じ会議へ二人で参加する1組 | 2人 | 二人用の会議スペース |
これは設備数を決める公式ではありません。研修でも機密内容を扱うなら個室が候補になりますし、二人用の場所も会話の内容に合う性能が必要です。初期案として割り当て、実際に運用できるかを検証します。
7-2.ブースの設置は、床面積だけで判断しない
個室ブースを2台並べる案では、製品本体の寸法に加え、扉が動く範囲、出入りする場所、吸排気や点検に必要な空間を確保します。廊下の余白に見える場所でも、避難経路なら置けない場合があります。
搬入経路、床荷重、天井との間隔、電源なども、メーカーと管理会社に確認します。屋根付きブースは「家具だから消防設備の確認は不要」と考えてはいけません。
東京消防庁は、可動式ブース内にも消防用設備等が必要となること、一定の基準を満たす場合に一部の設備を設けない特例があることを案内しています。適用は設置条件と地域の取扱いを確認し、購入前に管理会社・施工会社・管轄消防署へ相談しましょう。
小さく試し、予約と実利用の差から改善する
8-1.最初は仮設の席でも、必要な条件を試せる
いきなり全面改装する前に、壁際の一席や、家具で囲った半個室から試す方法があります。試したいのは見た目より、誰がどんな会議で使い、周囲にどんな影響が出るかです。
利用者には、接続の手間、声の聞こえ方、暑さ、机の広さなどを短く聞きます。近くの執務席にも、会話が気になるかを確認してください。利用者だけが快適でも、隣の社員が集中できなければ配置の修正が必要です。
簡易席の試行結果から、同じ場所を個室ブースにしたときの通信や換気まで保証できるわけではありません。機器や囲い方を変えたら、その状態で再確認します。
8-2.稼働率だけでなく、会議を断った回数を見る
予約が多い場所は人気があるように見えますが、長時間の集中作業で押さえられ、Web会議に使えないのかもしれません。予約率だけで増設を決めず、実際の用途と使えなかった場面を調べます。
改善を見る指標としては、場所を確保できなかった回数、一人利用で通常の会議室が埋まった時間、音や通信の不満、予約しても使われなかった割合などが候補です。記録は必要な範囲に絞り、会議内容の収集は避けます。
出社方針や採用人数が変われば、必要な場所も変わります。席の配置と予約ルールを定期的に見直し、次に調整する余地を残しておきましょう。
出社とテレワークが混在するオフィスでは、全員分の机を置くことと、仕事をする場所を確保することが、必ずしも同じではありません。出社人数と会議の重なりを把握し、聞く・話す・集まる場所を使い分ける。そこに音、映像、通信、空気の条件を合わせることで、会議室を奪い合わず、執務席でも落ち着いて働けるオフィスに近づけます。




